現代のサムライたちの時空間へ

サムライ伝 Vol.3 ユニフォーム会社経営者 能美健二氏

第3回目にご登場願いましたサムライは1回目のサムライFどのが、彼こそ現代のサムライだと思われる方として御紹介いただきました、株式会社能美の代表取締役会長、能美健二どの。1年で1番気温が高く蒸し暑い「大暑」にもかかわらず7月下旬にしては涼しささえ感じる午後、能美どの行きつけの神楽坂の小料理店にてお話を伺いました。始めてお会いした侍の、キリッとされた佇まいに私も些か緊張してスタートです。

サムライのルーツ

島根県 石見の国出身。育ちは、「数年に1度は怒る(水害)」と表現される江(ごう)の川、上流域。

社長に僕は惚れててね。僕の基点。いい男だったな

女「今のお仕事をされる経緯はどのような?」

侍「大学卒業後誘われて婦人服メーカーに入社してね、全国の百貨店を相手に営業。まわってない県はない程。その会社の社長に僕はずいぶん惚れたの、碁の相手もずいぶんしたんだけど、八幡宮の裏手に社長の自宅があって山梨出身の人なんだけどね、会社の寮もあってね、22歳ごろかな、毎朝鎌倉八幡宮の境内を掃除しに行って、その後早朝5時ごろからかな小1時間程座禅を組むという日課を充実感をん持ってやっていたんだけれど、その社長がある日、”鎌倉古都保存会”というのをつくって、当時八幡宮裏のマンション建設に反対して最後まで闘ったてたの、社員800人も署名とか協力してね。住宅を売って儲けるより、生まれた土地というわけではないんだけれど、美しい鎌倉を守ろうと。そういう趣旨や思想が好きだった。だから給料安いのも我慢できたしね。山梨に社長の墓があるんだけれど、たまにゴルフで近くを通るといまだに墓参りするね。仕事の内容は今では変わってもね、僕の基点はそこにあるね。いい男だった!」

「その会社が傾いてきて会社がなくなる2年ぐらい前から銀行が入り込んできてね、社員の立場も危うくなってきて、で、たまたま仲間がいて外でいっしょに会社をやらないかって事になって。その会社が上場準備で某大手から引き抜いた精鋭社員を社長にすることにして、ユニフォーム会社を5人で設立して8年やったかな。その精鋭社長がこれまた優秀な社員をどこかからか会社を大きくするために引き抜いて僕より上の役員にさせる。僕はそれが気に入らなくて1年ぐらい準備して今の自分のユニフォーム会社をつくったんだよね。ぼくはあの時代は1番一生懸命な時代だけれど、1番卑怯な時代だったね。その会社の営業でまわりながら自分の会社をよろしくと言うのだから。あのときのつらさは癒えない。ちょうど50の時かな。体力的にも後がなかった。」

サムライのいま

好きな武将はの問いには特にないけれど、強いて言えば「伊達政宗」。「フィクションの中で知りえたことだけしかわからないけれど、秘密文書のサインの真偽を敵にわからないように針で穴をあけるという印をつけて送ったところ、男としての準備、そういう感覚が大好き。映画より小説のが仔細が書かれていていいね。」

優秀な人ってたいへんな功労だとは思っても、好きかどうかは別だね

「あとは僕の好きな男を書く藤沢周平の”蝉しぐれ”が大好き。ぜひ読んで。映画にもなってるから何としても見て。僕はもう3度も読んだけど毎回涙が出る。主人公の文四郎の初恋の人お福との少年時代のエピソードや、将軍から見初めれて側室になるんだけれど、相手が将軍ではあきらめるしかない。その後も殿様の子供を連れて逃げるときに助けるんだけれど、まさに男の仕事。腕も立つし、切り抜け方が。小説の中ですごい気持ちの描写があってね。ぜひ読んで。」

ここでタイミングよく?席を外していた友人の侍Fが登場。次の質問は好みの女性に写るところ。
「好みの女性?体つきのこと?心?間違いないのは、能美さん!と好意を示してくれる人はすべて好きw」と満面笑顔。「女性関係はあまりありませんでさらっと。。」とのコメントに、侍Fが「おれが葬儀で全部バラす」と物言いが。。

趣味は、ゴルフと釣りと碁。

あなたにとってネクタイとはの問いには、「大事なときに正式に会う時は絶対にしていくので姿勢を正す役目があると思うな。難しいのは、自分の好みと相手の好みが違うことだね。でも最近は昔と逆でツヤっぽいのが好きだね。」との答えに、F氏は「女性の好みじゃないの?」と再度つっこみ。

現代のサムライとはどんな男か?との問いには、フィクションではいるけれど、実在する人物では話を聞いたりしただけではだめで会って関わらないとね。優秀な人ってたいへんな功労だとは思っても、好きかどうかは別だね。

サムライ能美どのは、すでに会社も息子さんにまかせ、ご自身は会社に毎日出社しながらも以前ほど経営の舵はとられずも、なおいろいろなお仕事、雑事や趣味などをこなす重要な存在。私自身、親しい友人でさえも幼少の頃の話や仕事のルーツや現在まで聞くことは少ないので、サムライ伝に出ていただいた方には、短時間でその方の一生の軌跡を知ることなり、フィクションとノンフィクションの間のような、知らないのに知っているような不思議な存在になります。今回まったくの初対面でありながら、お酒と御紹介者という仲立ちに援護されながら、ひとりの男性の生き様をお聞きできたのはまるで映画や小説を読み終えたような感覚。若輩者がコメントすることなどまさに恐れ多いことですが、サムライ75歳。凛とした佇まいはまさにさまざまな戦いを経てきたサムライのごとく、語りつくせぬその多くのこころの機微が毅然としたお顔に現れ、そして男はいくつになっても少年のままと言いますが、ご自身の好きなことなど語られるときの表情など、本当に少年のごとくでありました。それでいてこの世代特有の男気や正義感が眩く。


そんな能美さまにネクタイを1本選んでみました。顔周りはマッドな黒。下は柳色から茶色の暈し模様の日本的な染め模様。

女「これから先、何かしたいことありますか?」
侍「Fに負けないようにゴルフしたいね。あと北海道でイワナ釣りをもう1回したい。」

女「余命があと3日だったら何がしたいですか?」
侍「あなたを口説くかもしれんな。」
F 「おれは満開の桜の下でみなさんで宴会って言ったんだよ」
侍「そんなもったいないことはしない」

メッセージ編

女「では最後に、後生に向けてメッセージがありましたらお願いします!」

好きな人には徹底的におつきあいする 男でも女でも

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