現代のサムライたちの時空間へ

Vol.10 ソウダルア 出張料理人

The Biography of the samurai essence Vol.10

サムライ伝

21世紀の、侍たち

紹介者  Vol.8 中澤 希水氏 (書家)

2018.9.25

 

初めて会った時の印象は、寡黙で近寄り難い気難しそうな人。

話してみると、とても気さくで親切で自然体な人で、最初の印象とあまりに違って拍子抜けした程。後から聞けば、その時は“黒子”に徹していたそうだ。それがサムライ伝Vol.7の取材の時で、盆栽師 平尾成志氏のテレビ収録イベントに、リハーサルから本番までの間、私もソウダルア氏も何時間も収録現場にいた。近くにいて何度か話しかけようとしても、何だか怖そうで出来なかった。そして、ルア氏が本番で作ったお料理も頂いていた。でも、今回は、Vol.7平尾氏→Vol.8の書家 中澤氏から出張料理人 ソウダルア氏を紹介いただくというご縁。先日祇園の書の個展でルア氏と対談をされたばかり。3人の侍は同世代であり、日本の伝統的な文化を新しい発想で表現しているアーティストで、友人同士でした。

出張料理人とは、読んで字の如く、お店を持たずに依頼された出張先で料理を作る人。ルア氏は料理人の1つのゴールとして渋谷でお店を持っていた時期もあるが、震災の原発の影響で食材の安全性を担保できないのにお金を戴くことに違和感を持ち、考えた挙句に、出張専門にする。その後、瀬戸内国際芸術祭などへの参加で、盆栽師 平尾氏はじめ、色々なスタイルを持った人たちと出会い、受身だった料理人のイメージから、自分にも料理を通して発信することがある、きちんと伝えたいことがあると、それらが伝わりやすい表現方法を考えた結果、地方へ行って、風景に、そこで採れる食材などにインスパイアされ、その時に感じたものを全て盛り込んで、料理として表現する今のスタイルにたどり着いた。

 

 

ルア氏が、料理に興味を持ったのは、5歳の頃。両親が共働きで兄弟もいなかったので、家にあった調味料や食材で何かを作り出した。親は自由業で放任主義、ある日幼稚園のお迎えを忘れていて迎えに来なかった。携帯もない時代で、大人が困っているのを見るのがいやで、翌日からお迎えの時間帯に、スーっと消えて1人で帰るようになったのが、今、「寄り道好き」として、東京にいながら地方に行っている原体験ではと話します。

 

「10歳ぐらいまでには一通り作ることができるようになり、13〜14歳の頃には、フードコーディネイターの母親のアシスタントを始めました。僕は、どこかで修行しているわけでもないし、教わってもいない、悪く言えば軸がないし、よく言えば囚われていない。スタイルのある人のように自分の方に食材を集めるのではなくて、僕が食材へ寄っていく。その土地に呼ばれたら、3〜4日前に行って、その土地の風景を見たり、そこに暮らす人と話したり、食材や調味料、酒などを体験します。例えば、山の中で塩がなければ、塩を使わずにかわりに味噌や醤油を使ったりしますが、自然とその土地から産まれるもの同士はあいます。肉と野菜だったり、海のものと山のものも合うし、そもそも風土に合わないものは育たない。自然の中で育つもの同士はしっかりデザインされていていますね。それに海抜、標高を合わせると基本的に合います。違う国同士では、緯度を合わせると地球は回っていて環境は一緒なので合いますよ。」

「今までの資本主義社会や、国的にこういうルールがあったほうが便利だみたいな世の中がなんとなくしっくり来ていなくて、もともと決まってることをきちんと行うというのが苦手なんですが、料理を盛るもの、お皿だとお皿の枠組があるのが窮屈で、このお魚は本当にこのお皿に盛られたかったのかなとか、やはりその魚が生きていた環境に近いような、葉っぱとか、海藻とか、石とかの自然なものと盛られた方が喜ぶかなとか。」

 

「できるだけ優しく食べたい。 どこが食べられて食べられないとかも、昔の先人が一旦決めたことで、食べようと思えばほとんどの部位が食べられますし、ウロコも揚げれば食べられる、内臓も塩漬けすれば食べれますし、アラとかもとても美味しい出汁が出るし、全部ちゃんと頂きたいと思います。そして最後の最後は、骨の出し殻みたいなのは海に返します。すると土が豊かになる。食べるという行為も地球の循環の一部でありたいと思います。人間の都合で循環を歪めているからこそ、今、いろんな問題がおこっていると思います。究極的には世界平和を目指したい。人間が自然のサイクルに収まるようになれば世界が平和に近づけると思います。絶対にこうでなければとか、お金を稼がないととか、決めてしまうと、他に歪みが生まれやすいと思います。こういう料理を作らなければいけないと考えたりすると、捨てるものが出てくる。そうなると、それと、それ以外という2元的な世界を作ってしまうと思うので、シンプルに、ごく普通にいただければと思います。」

 

「好きなことは、料理と寄り道なんですが、あまり目的的でなく、なんとなくあの街へ行ったことがないなとかで、適当にバスに乗って、降りたくなったらふらりと降りてみる。自分が感じる“なんとなく”に従っていく。今はいつでもどこでも何でも調べられてしまうので、将来の目標とか、食べたいものとか、買う服とか、みんな目指しすぎている感じがしています。そんなに目指さなくてもちゃんと楽しい時間はあるし、美味しくなる。いっぱい調べて目指さないと、いい人生送れないみたいなイメージ。色々決まりすぎてる人とは、こちらが合わせるしかなくなくなります。そういう意味では、今自分は、社会的な成功者と真逆ですが、仲間も増えてきたし、好きな仕事をして楽しく充実して生きることができている。過去に誰かが考えたルールに従って生きていても、戦争とかは最たる例ですが、変わるときは変わります。今、いろんな人が言っていますが、時代の変わり時かと思います。」

 

「僕が思う“侍”とは、”最後まで勤め上げる人”。土方歳三は、近藤勇が自害に追い込まれても、最後まで新撰組の看板を背負い戦い続けた。今ではサッカーなど、世界で活躍する人を“侍”と言いますが、今の時代、世界で活躍するのは昔より簡単です。明治維新が面白いのは、結局海外への留学も、帰国して日本を何とか良くしようとしていたんですよね。そういう人たちがもっと出てきたらと思います。」

 

「僕にとってのネクタイとは、イギリスの紳士がしている印象が強いです。その紳士の定義ですが、村上春樹の小説「ノルウェイの森」の永沢さんがその小説の中で言っているのが僕にはしっくりきていて、「自分がやりたいことをやるのではなく、すべきことをするのが紳士だ」。そういう男がしているものがネクタイのイメージ。僕はそういう意味では紳士の定義からかなり外れます。僕は、すべきこととしたいことを同時並行的にやって行きたいので、したいことを捨てられない。でも、そういう子供っぽさを同居させようとするのは、紳士たるものではないかなと思います。」

「これから先、未来にしたいことは、海外進出というほど大袈裟なものではないのですが、自分の料理のスタイルが、海外の、違う人種、違う思想で生きてきた人達にとってどういう風に伝わるのかは気になります。僕が子供の頃は、受験があって、いい学校に入って、いい会社入ってというのが良いというわかりやすい時代であったし、ネットもなく選択肢も多くはなかったので、未来を描くよう言われてもできませんでした。でも、今までの、自分がもっと理解されていなかったし、報われていなかった時代があるので、どちらかというと、未来と、自分がやっとフィットしてきているように感じられて、今のこの現在進行形に、未来をすごく感じます。」

 

 

ルア氏は、とても古くて新しい人だと感じる。農耕が始まって人が管理され始める以前の縄文時代の人間たちは、こんな風に自然の一部として、地球に自生するもの達と共に生きていたのではと想像する。長い長い地球の歴史のつい最近の2000年の間に、欲や競争や戦いがエスカレートし、地球のサイクルも人間の生き方もアンバランスになって行き着くところまで来てしまった。でもDNAのどこかに太古の記憶があり、危機感を感じるからこそ、もともと知っているナチュラルでシンプルな暮らし方を、便利になりすぎた21世紀の中で新たに再現させていこうとする人達が年々増えてきていると肌で感じる。ルア氏も私もそのひとりだからこそ、インタビューに安心感を覚え、共感した。

ルア氏は言う。「余命3日だとしたら、今はネットでいろんな人呼べるので、自分が最高だなって思える場所で、3日3晩、満漢全席。音楽やれる人には奏でてもらい、絵の描ける人には描いてもらって、踊れる人には踊ってもらって、僕は僕で最高だと思う料理を作って、浴びるように酒飲んで、好きな人たちと食べたいですね。男ってバカみたいに20歳で人生の目標を決めたりするんですが、趣味であった料理を仕事にしようと決心し、その時の目標を「3食美味しいものを好きな人と食べたい」にしたんです。その美味しいものを自分が作れるようになろうって。その後、「美味しいって何か?」と掘り下げて行くんですが、結構難しくて、いろんなことをやっているうちに、究極の一皿を作るというより、そこにあるものを考えに考えてできる限り美味しくするっていうのが、僕の美味しい料理だなと思えたんです。だからそれを最後までやると思う。」

最後にメッセージを頂きました。

「明日、あなたの好きな人に、美味しいものを作ってあげてください。」作れなくてもご馳走してあげるだけでもいいんですが・・と。

 

 

■Profile
ソウダルア
出張料理人/イートディレクター
幼少の頃からの趣味である料理と寄り道がそのまま職業に”美味しいに国境はない”を揚げ、日本中でそこで産まれた食材のみを扱い、これからの伝統食を主題に海抜と緯度を合わせることで古今東西が交差する料理をつくる。

2015 大地の芸術祭 うぶすなの家
2016 瀬戸内国際芸術祭 レストランイアラ
2017 大阪 パームガーデン舞洲グランピング メニュープロデュース
2018 山口県仙崎 センザキッチン、大分県都町 焼山、香川県小豆島、仁尾町父母ケ浜、長崎県壱岐、京都祇園 ygion、渋谷100BANCHなどその土地の食材でフードインスタレーションを行う

漫画カルチャー誌 COZIKIに参加(東京で買えるのは新宿TSUTAYA apartment のみ 10/3までの限定発売)
https://coziki.jp/

フードカルチャー誌 RiCE.pressにて連載
https://www.rice.press/talk/3054

フードインスタレーション映像  (美 極まる映像!!必見です!)
https://vineo.com/275505848

 

■Contact
eat_ruasoda@gmail.com
080-7039-9363
https://www.facebook.com/eat.ruasoda

Photography by NAOKI Miyashita(seascape),   SAWA(all others)
Text by Junko Okazaki

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